2014年7月31日木曜日

[歌詞] Let Down (Radiohead / 1997)

  • はじめに

Radiohead (1985- )
ギターのアルペジオから始まり、ベースとドラムが続き、トム・ヨークの高音ヴォーカルが乗ってくるこの曲。昨日紹介したカシミールのロケット・ブラザーズと雰囲気がよく似ていると思いませんか?そんなことで、今日はレディオヘッドの名作"OK Computer"からの一曲。

  • イメージの羅列


Transport, motorways and tram lines
Starting and then stopping
Taking off and landing
輸送機関、高速道路、路面電車
発車と停車
離陸と着陸

(動)名詞だけをひたすら羅列して、情景を描写する部分。おそらくこのイメージの元になっているのは彼ら自身のライブ・ツアーだろうが、昼夜を問わず、絶え間なく動いている現代社会のイメージでもある。



  • アルコールと鬱




The emptiest of feelings
Disappointed people clinging on to bottles
And when it comes it's so so disappointing
からっぽの感情
空のボトルを抱きしめながら絶望している人々
それがやってくると、ひどくとても落胆させる

"The"+形容詞=名詞が適応される第一センテンス。"emptiest"は「もっとも空っぽ」を意味して、単なる空虚さ以上の強調がなされている。「(空の)ボトル〜」はアルコール依存症の人々を想像させられる。「それがやってくると」の「それ」は「からっぽの感情」のことで、心を蝕む空虚感、鬱の発作のことだろう。

  • 地面を這う虫けら


Let down and hanging around
Crushed like a bug in the ground
Let down and hanging around
期待を裏切られ彷徨って
地面を這いつくばる虫けらのように潰され
期待を裏切られ彷徨う

"Let down"は「〈人を〉失望させる、〈人を〉裏切る」といった意味。受動態なので、この場合は「裏切られた、失望させられた」と訳す。

  • 必死に踠く


Shell smashed, juices flowing
Wings twitch, legs are going
Don't get sentimental
It always ends up drivel
砕かれた殻、飛び散る体液
翼は引っ張られ、脚は向かう
感情的になるなよ
いつも鼻水まみれになるから

コーラスの「虫けらのように潰される」からのイメージを引きずって展開されるヴァース。殻、体液、翼、脚の4つのイメージが現れる。自分の身を守るための殻は砕かれ、強い痛みを感じた際に流れる体液(涙)があるいは傷口から流れる体液(血液)が飛び散り、逃げるための翼は引っ張られ飛び立つことはできず、脚だけは向かおうとあるいは逃げようと必死にもがく様子が目に浮かぶ。




One day I'm going to grow wings
A chemical reaction
Hysterical and useless
Hysterical and ...
いつかおれに翼が生えてくる
化学反応
取り乱した役立たず
取り乱した……

いつの日か、逃げ出すための翼が生えてくる。それは自由の象徴的な存在である。しかし翼を活かすことはできずに、取り乱して……

  • 再び地を這う


Let down and hanging around
Crushed like a bug in the ground
Let down and hanging around
見捨てられて彷徨って
地面の虫みたいに潰されて
見捨てられて彷徨って

Let down again
Let down again
Let down again
また裏切られて
また傷つけられて
また失望させられて

  • ここではないどこかへ


You know, you know where you are with
You know where you are with
Floor collapsing, floating, bouncing back
どこにいるのか君はわかっているのだろう?
君がどこにいるのかが
床は崩れ、宙を漂い、跳ね上がる

そう、ここからは一刻も早く逃げ出さなくてはいけないのだ。床は崩壊し始めて、スローモーションのように落下し、地面に叩き付けられる。

  • だから羽を……


And one day....
I am going to grow wings
A chemical reaction
Hysterical and useless
Hysterical and...
そしていつか
おれの背中に羽が生える
化学反応
ヒステリックで無益なもの
ヒステリックで……

崩壊する足場から逃れるためには、羽が必要なのだ。しかし、それは役に立たずに……

  • 三たび地を這う


Let down and hanging around
Crushed like a bug in the ground
Let down and hanging around
裏切られて路頭に迷う
地を這う虫のように踏みつけられ
裏切られてさまよう

radioheadのアルバムはどれを買っても楽しめますが、一枚だけを選ぶとするなら3作目のOKコンピューターでしょう。これを聴くことなくして、90年代は語れません。全曲に漂う絶望感と高揚感のアマルガムを味わうべし。


輸入版
このジャケットのイメージがまさにこの曲
国内版
輸入版よりなぜか安い
デラックス版
CD2枚+DVD

2014年7月30日水曜日

[歌詞] [映像] Rocket Brothers (Kashmir / 2004)

Kashmir (1991- )

今日の一曲は、デンマーク出身のバンド、カシミールの作品。PVの出来がよいので、まずはゆっくりと全画面にして鑑賞してほしい。

I miss you so much boy
will we be coming on again
don't ever loose your ropes
this man is hanging by the ends
きみがいなくてとても寂しいよ
またいつかあえるよね?
きみのロープを手放さないでほしい
ぼくはその端にぶら下がっているから

「ぼく」から「きみ」へのラブソングだが、タイトルにあるようにこれは兄弟愛のお話。異性愛ではない。弟から兄へか?"boy"は呼びかけだから、特に訳さない。

I owe you so much time
yes you might say it isn't like that at all
but now it's coming back to you
these open moments that I blew
長い間きみの世話になった
きみは「そんなことはない」と言うだろうけど
でも、いまになってきみに恩を返すことができる
ぼくが台無しにした開かれたチャンスを

"open moments"は「開かれた(閉じられていない)好機」だろうか。おそらく、いまままで「ぼく」には「きみ」がくれた機会が沢山あったのだけれど、どれも無駄にしてしまった。その親切に対して報いたいということだろう。

rocket brothers crack and burst
if they can't meet upon the verge
of breaking into seperate parts
that was not written in our cards
now you got someone to protect
someone you cannot reject
ロケットブラザーズはひび割れて、破裂してしまう
もしばらばらに壊れてしまう瀬戸際で結びつけないのならば
そんな風になるとは思ってなかった
きみは守るべき人がいる
拒めないひとが

ここでは、兄と弟のことが第三者の視点から語られる。「きみがいなくて寂しい」と語る「ぼく」だが、二人がそろえば一触即発なのだ。"that was not written in our cards"の"cards"はトランプ(占い)のことを指す。"in[on] the cards"で「ありそうで、起こりそうで」を意味している。つまり、「トランプ占いではそういう結果ではなかった」→「そんな風になるとは思わなかった」となる。

そして今では、「きみ」には守るべき人がいる。それは「ぼくら」が大人になったことを、つまり少年ではなくなったことを意味している。

I miss you so much boy
but I was buried in the mines
I found it hard to stop
you found me very hard to find
きみがいなくて寂しい
でもぼくは鉱山(地雷)に埋められていた
ぼくにはやめるのが難しいことはわかっていた
きみにはぼくを見つけ出すことはとても難しかった

"mines"は鉱山、あるいは地雷のことだ。鉱山だとすれば、「ぼく」は比喩的に鉱物(ダイヤモンド、金、銀、鉄……)なのだろうし、地雷ならば、「ぼく」を見つけ出す道のりには沢山の罠が仕掛けられているということだろう。どちらにしろ、意味は通る。「やめることは難しい」と語るように、望んでいなくてもそうせざるをえない状況にある「ぼく」を「きみ」は見つけ出そうとする。

but now that you've made way
I'd better tie together these ropes again
and throw the times right back to you
and all the chances that I blew
でもいまきみは成功した
ぼくは再びこのロープを硬く結ぶべきだろう
そして時間をきみにかえすべきだろう
ぼくがだめにした好機すべてを

ふたたび巡り会えたロケットブラザーズ。そして二人は誓う、もう二度とバラバラにはならないと。

rocket brothers crack and burst
if they can't meet upon the verge
of breaking into seperate parts
that was not written in our cards
ロケットブラザーズはひび割れて、破裂してしまう
もしばらばらに壊れてしまう瀬戸際で結びつかないならば
こんなことになるとは思っていなかった

しかし、結局は同じことの繰り返し。離れれば寂しいけれど、出会えばイライラがつのり、爆発してしまう。出会う前は仲直りを決意し、もう二度と喧嘩をしないと決めていても、元の木阿弥。

those rocket brothers on the verge
we should be careful' cause it could burst
and we're not lonely anymore
lonely as we were before
and now there is someone to protect
someone you cannot reject
something I will not neglect
瀬戸際のロケットブラザーズ
爆発してしまいそうだから慎重にならなくては
ぼくらはもはや孤独ではない
以前のように孤独ではない
いまは守るべき人がいる
きみには拒めないだれかが
ぼくには無視できない何かが

上にも書きましたが、まず特筆すべきはPVの出来の良さ。かわいらしいアニメーションでありながら、歌詞と呼応するしっかりとしたストーリー展開は素晴らしいですね。歌詞が分からなくても、グッとくるものがあるはず。

Kashimir自体は、日本で対してブレイクできないまま売り時を逃した感がありますが、この曲はとてもいいですよね。強いて言うなら、繊細な高音ヴォーカルとアルペジオのバッキングがレディオヘッドの"Let Down"を彷彿とさせます。

アダムを死へと導くカイン
歌詞の内容は普遍的な兄弟関係とでもいうか、よくある話かと。個人的には旧約聖書の「カインとアベル」を想像しました。人類の始祖アダムとエヴァの息子であった、長男カインと次男アベル。二人は神へ収穫の捧げものをするが、神はアベルの捧げもののみに注視し、カインのものは無視する。嫉妬にかられたカインは、アベルを野に誘い、殺害する。人類最初の殺人者となったカインは、二度と消えない刻印を受けエデンの東へ追放される……

PVのほうがこの神話を反復しているような印象をうけます。家族の間柄は離れていれば懐かしい、恋しい、寂しいものですが、常に一緒にいられるかといったら別問題です。このへんの距離感が大切だということは、ここでもここでも話しましたが、結局両者が適切な距離感––––遠い方にあわせなければいけない––––を把握できていないと悲劇なのです。そして、年を取れば自然と離れていく––––あたらしく家庭をきづく––––ものだろうし、丸くなっていくものなのだろう。


期間限定版、曲数が多い
2004年のものが未だに売れ残っているのが悲しい
通常版、14曲入り
輸入版
国内版とジャケットが違うのだけれど、
このジャケの方が雰囲気あっていいと思う
こちらも輸入版
上記との違いは不明
Amazonしっかり整理しろ!

2014年7月24日木曜日

[歌詞] Time~Breath (Reprise) (Pink Floyd / 1973)

Pink Floyd (1965-1996, 2014?)
あの国民的俳優も愛聴

今日紹介する曲は、5000万枚以上を売り上げたモンスターアルバム「狂気~The Dark Side of the Moon」からの一曲。そういえば、10月に新曲がでるらしいですね。




Ticking away the moments that make up a dull day 
You fritter and waste the hours in an offhand way. 
Kicking around on a piece of ground in your home town 
Waiting for someone or something to show you the way. 
退屈な一日の一瞬一瞬がチクタク音を刻む
きみはなんの用意もせず、時間をつぶし無駄にする
地元のせまい土地をうろつきながら
きみにするべきことを教えてくれる誰かや何かを待っている


「『時間はない』わけじゃない『時間はつくる』ものだ」––––出典不明
ドラえもんは語る
退屈とはなんだろうか。私の考えではそれは単純な二つの要素から構成されている。「目的のなさ」と「やる気の欠如」だ。だれもがやらなければいけないことを抱えている。赤ん坊であろうと老人であろうと、なにかしらの義務は抱えている。ニートや引きこもりも同様だ。彼らはべつにやることがないわけではない。問題は––––始めに書いたように––––「目標」と「情熱」なのだ。


Tired of lying in the sunshine staying home to watch the rain. 
You are young and life is long and there is time to kill today. 
And then one day you find ten years have got behind you. 
No one told you when to run, you missed the starting gun. 
晴れた日に日向で寝転ぶのにも、家から雨を眺めることにも飽きた
きみは若く、人生は長く、今日はやることがなにもない
そしていつの日か、10年が過ぎたことに気づく
だれもきみに教えてはくれなかった、きみは機を逸したのだ


「明日は日曜日そしてまた明後日も……」
無料ためし読み本棚」で読める(期間限定)
「目的」や「意思」を失った状態––––医学的には鬱と診断される––––になると、次第に億劫が増して行き、体を動かすことすらうんざりするようになる。別に面白いことがあるから、テレビを「観ている」わけではない。単に「眺めている」だけだ。ときに新しいことを始めたとしても、それが長続きすることはない。次第に無限だった時間が有限だったと気づきだす。気づいてはいても、目にしないようにしていたが、それはもはや目を背けられないほど近づいてくる。


So you run and you run to catch up with the sun but it's sinking 
Racing around to come up behind you again. 
The sun is the same in a relative way but you're older, 
Shorter of breath and one day closer to death. 
だからきみは走り出す。太陽に追いつこうと走り出す。でも太陽は沈みかけている。
ぐるぐると競争したあげく、きみの後ろから追いついてくる
相対的には太陽は変化してはいない。でもきみは年老いた。
息が切れるようになり、死がじわじわと近づいてくる。


「失墜するイカロス
by Jacob Peter Gowy

そしていつか決意する。しかし決意した時期が圧倒的に遅いのに、君はまだ夢をみている。太陽に追いつけると思っているのだ。ギリシア神話のイカロスが教えてくれるように、太陽には決して追いつけない。太陽は地球の自転によって、相対的に位置が変化しているだけだ。もちろん太陽も有限だ。しかし100億年の寿命と80年の一生では比べようもないのだ。そして無益な試みを続けているうちに、君の体は老い、死の訪れを予見するようになっていく。


Every year is getting shorter never seem to find the time. 
Plans that either come to naught or half a page of scribbled lines 
Hanging on in quiet desperation is the English way 
The time is gone, the song is over, 
Thought I'd something more to say.
その時間をみつけられないまま一年一年がしだいに短くなる
計画は無に帰し、ページ半分の書きなぐりがあるだけだ
イギリス人らしく静かな絶望にひたりながら
その時は過ぎ去り、この曲はフィナーレを迎える
もっと言いたいことがあったと思うのだけれど


"The time"は"when to run"つまり、行動をおこすべき時だ。結局だれもなにも教えてはくれないのだ。人生は基本的に自分に帰する。
「犀の角のようにただ独り歩め」––––『スッタニパータ』
きみの人生はきみに帰するのだ。きみは色々な理由をおもいつく。生まれた環境が悪かった。育ててくれた親が悪かった。友人に恵まれなかった。不幸に見舞われた。でも結局は自分に帰する。だれかのアドバイスに従って失敗しても、それは自分のせいなのだ。損をするのも得をするのも自分なのだ。残ったのは、失敗の記憶とやりかけの計画、そして静かな絶望。

今日の日本の現状を予見していたような曲ですが、実際のところこの手の問題ではイギリスのほうが先を?進んでいます。社会構造の変化と手厚い失業保険により、かの国では日本よりずっと多くのニートが存在するわけです。まあ、ニート自体もイギリス発祥の言葉だしね……

オアシスのリアム・ギャラガーがハローワークで「歌手になりたい」とか言って、職員を困らせたり、スミスのモリッシーが26まで職歴なしで両親と同居していたりしたのは比較的よく知られた話かと。そんな社会では多大なる共感を持って迎えられたのだろうと想像するに難くない。

歌詞の通り「静かな絶望」で終わるかにみえたこの曲ですが、じつは同じアルバムの別の曲の繰り返しが続きます。


Home, home again
I like to be here when I can
When I come home cold and tired
It's good to warm my bones beside the fire
ただいま、帰ってきたよ
できることならここにいたいんだ
凍えて疲れて帰って来た時に
暖炉の前で体の芯から暖まりたい


「きみが留まること」を否定していた歌詞が一転して、自身にとっての家の素晴らしさを語る歌詞へと変化する。この部分を理解するには、繰り返しでない方の"Breath"からの歌詞を引用するべきだろう


Run, rabbit run
Dig the hole, forget the sun
And when at last the work is done
Don't sit down it's time to dig another one
走れ、ウサギよ走れ
穴を掘るんだ、太陽のことは忘れろ
穴をぶじ掘りおえたら
休んでる場合じゃない、次の穴を掘るんだ


つまり太陽を追いかけることを止め、穴を掘れ––––自分のできること、得意なことをしろ––––と促している。そして、一つ掘っただけで満足せず、掘り続けることの重要性を示唆している。そしてそのときになって初めて家の価値が、自分を閉じ込めておくだけだった家の価値が生まれる。


Far away across the field
Tolling on the iron bell
Calls the faithful to their knees
To hear the softly spoken magic spell
遠くこの野原のむこうから
鉄の鐘の音が信心深きものたちの全身に響き渡り
そっと語られる魔法の言葉に耳をかたむけるように誘う


そしていつの日か、鐘の音が鳴り響き、その時がきたことを知らせる。人々は教会に集い、司祭の言葉に耳を傾ける。在りし日のきみを思い浮かべながら。



2011年リマスター版(輸入)
2011年リマスター版(国内)

デラックス版
「明日は日曜日そしてまた明後日も……」他収録
「タンマウオッチ」の回を収録

2014年7月21日月曜日

[歌詞] [映像] Flowers in the Window (Travis / 2001)


Travis (1995- )

When I first held you I was cold
A melting snowman I was told
But there was no-one there to hold before
I swore that I would be alone for ever more 
君をはじめて抱いたころのぼくは冷たい人間だった
雪だるまが溶けていくようだといわれた
でも一生ひとりきりで生きていこうと誓っていて
それまで誰かを抱きしめたことはなかった

Wow look at you now
Flowers in the window
It's such a lovely day
And I'm glad you feel the same

いまは君をみればわかるんだ
窓際には花があり
今日はすばらしい天気だ
君が同じ気持ちなんて嬉しいよ


Cause to stand up, out in the crowd
You are one in a million
And I love you so
Lets watch the flowers grow
だって君はほかの奴らとは違う
100万人に一人なんだ
君をこころから愛してる
花が育つのをいっしょに眺めよう

There is no reason to feel bad
But there are many seasons to feel glad, sad, mad
It's just a bunch of feelings that we have to hold
But I am here to help you with the load
落ち込むひつようはないんだ
でも、嬉しいときもあれば、悲しいときも、苛立たしいときもある
そんなことも経験しなくてはいけないときもある
でもぼくはそんな心配事を抱える君を助けるためにここにいる

Wow look at you now 
Flowers in the window
It's such a lovely day
And I'm glad you feel the same

いまは君をみればわかるんだ
窓際には花があり
今日はすばらしい天気だ
君が同じ気持ちなんて嬉しいよ


Cause to stand up, out in the crowd
You are one in a million
And I love you so
Lets watch the flowers grow

だって君はほかの奴らとは違う
100万人に一人なんだ
君をこころから愛してる
花が育つのをいっしょに眺めよう


So now we're here and now is fine
So far away from there and there is time, time, time
To plant new seeds and watch them grow
So there'll be flowers in the window when we go
ぼくらは今ここにいるから、ちょうどいい機会だ
ずいぶん遠くまで来たし、時間も山ほどある
だから新しい種を植えて、育つのを見守ろう
そうすればまたここに来たときに、窓辺に花が飾られているはずさ

Wow look at us now
Flowers in the window
It's such a lovely day
And I'm glad you feel the same

いまは君をみればわかるんだ
窓際には花があり
今日はすばらしい天気だ
君が同じ気持ちなんて嬉しいよ


Cause to stand up, out in the crowd
You are one in a million,
And I love you so
Lets watch the flowers grow

だって君はほかの奴らとは違う
100万人に一人なんだ
君をこころから愛してる
花が育つのをいっしょに眺めよう

トラヴィスの3rdアルバム"The Invisible Band"からの一曲。フジロックもやってることだし、出演してるミュージシャンを取り上げてみました。しかし、今回の主眼は歌詞ではない。歌詞は読んで分かるように、非常にストレートでベタなラブソングです。(けなしている訳ではない。個人的に好きな一曲)解説の必要なし。問題はPVなんです。まずPVを観てから続きを読んでください。



荒野の中を走る一本道にタクシーが一台。女性ドライバーと眠りこけているトラヴィスのメンバー4人。到着した街には、奇妙なことに女性しか見当たらない。大工仕事をする女性も、道ばたでブレイクダンスを踊る少女も、美容師とその客も、全員なぜか妊娠している。フリーマーケットで妊婦用のコルセットをみつけ笑うメンバー。マッシュルーム入りのチョコレートケーキを勧められるメンバー。ナイトクラブに案内され、歓迎を受けている中、フランだけはふらふらと外に出て行く。町外れまで行き着くと、有刺鉄線の向こう側には手枷をはめられた男が叫び声をあげていた––––そしてタクシーは静かに街から消え去っていく。お腹の大きな女性をかたどったお守りを揺らしながら。

はっきり言って、これはホラーです。つまり男性を妊娠させるための道具として、活かす殺さずの状態で監禁しておく。アマゾネス神話の現代版のような光景です。最後の不気味な和音がよりいっそう後味の悪さを際立てます。

昨今の彼氏理想像
なぜこんなストレートなラブソングに、あのようなPVを制作したのか。これはおそらく、恋愛に対する強烈な皮肉ではないでしょうか。デートにこぎ着けるまで、告白するまで、あるいは交際期間中は当人同士も冷静ではなく、歯の浮くようなセリフを言えたりします。恋は盲目、あばたもえくぼ。しかし、前回の曲とおなじように、いつかは慣れます。そして倦怠が、時には憎しみさえおこります。

「亭主元気で留守がいい」といった皮肉な見方があるように、嫁と子供を養うことが人生の使命となり、仕事に忙殺されると、あれほど熱中していた「愛」なるものが幻想に過ぎなかったと感じるのかもしれません。事実、英国では新婚の半数が離婚するようです。

歌ってる当人たちもどこか馬鹿らしく、あるいは醒めた目で曲をみている。そこを含めて、この曲が好きです。なお、この曲が収録されている3rdと2ndは90年代UKを代表する名作アルバムです。未聴の方は是非。それ以外は好きな人はどうぞぐらいのかんじかな。



この曲収録の傑作3rd
なぜか在庫切れのベスト盤にも収録されています。130円から中古があるから、これでもいいかも。

2014年7月20日日曜日

[歌詞] Stinkfist (Tool / 1996)


Something has to change.
Undeniable dilemma.
Boredom's not a burden
anyone should bear.
なにかが変わらなければいけない。
まさにジレンマ
退屈は誰もが我慢しなければいけない
人生の重荷ではない


Constant over stimulation numbs me
but I would not want  you any other way.
定期的な刺激がおれを麻痺させる
だが、おれはおまえを他のやり方で求めたりはしない


Cause,
Not enough.
I need more.
Nothing seems to satisfy.
I said,
I don't want it.
I just need it.
To breathe, to feel, to know I'm alive.
それは
満足できないから
おれはもっと必要なんだ
何も満足させてくれない
言っただろ
それが欲しいわけじゃない
ただ必要なだけだ
呼吸し、感じ、生きていることを実感するために

適応、順応、退屈、倦怠。どんなものも始めは刺激的でも慣れていくにつれて、飽きてくるものと言える。食べ物でもいいし、音楽でもいい、住む場所でも恋愛関係でも同じだ。冒頭の3つのヴァースはその倦怠からの突破を求めている。「なにかが変わらなければいけない」。それはおまえからの「定期的な刺激」によって引き起こされる。変化を「求めている」のではなく、それは差し迫った「必要」からなのだ。

Finger deep within the borderline.
Show me that you love me and that we belong together.
Relax, turn around and take my hand.
指が境界の内側深くに入り込む
おまえの愛情をみせてくれ、おれたちの間柄を証明してくれ
リラックスして反対向きになったら、おれの手をとれ

コーラスのここが歌詞の最重要かつ最も具体的な部分。一文目は冠詞と動詞を外してあるため、少し抽象的な印象を受けるが、この指は「おれ」の指である。

I can help you change tired moments into pleasure.
Say the word and we'll be well upon our way.
おまえが倦怠の時を至福へと変える手助けをしてやろう
あの言葉を言えよ、そうすればすぐに始められる


Blend and balance
Pain and comfort
Deep within you
Till you will not want me any other way.
調和と均衡
痛みと安楽
おまえの奥深く
おまえがこれ以外ではおれを求めなくなるまで


But,
Not enough.
I need more.
Nothing seems to satisfy.
I said,
I don't want it.
I just need it.
To breathe, to feel, to know I'm alive.
だが、
十分じゃない
おれにはもっと必要だ
なにものもおれを満たせない
言ったはずだ
おれは欲しいのではない
必要なんだ
呼吸し、感じ、生を感じるために

「お前の奥深く」で倦怠を打ち破ったはずが、まだ満足できないと叫ぶメイナード。途中で話者が交代していることにも注目。単なるBメロの繰り返しではなく、きちんと歌詞の構成に適合しているのが見事。

Knuckle deep inside the borderline.
This may hurt a little but it's something you'll get used to.
Relax. Slip away.
指の付根が境界の奥深くまではまる
少し痛いかもしれないけど、すぐに慣れる
リラックスして。ゆっくり入れるんだ。

さきほどは「指」だった部分が、「指の付根」まで入っている。さらに深く。

Something kinda sad about
the way that things have come to be
desensitized to everything.
What became of subtlety?
何に対しても鈍くなったのは悲しいことだ
なにが薄れたんだ?

How can this mean anything to me
If I really don't feel a thing at all?
おれがもはや何も感じないのなら
これはおれにとって意味があるのか

そうして得たより強い刺激にも、いつかは慣れてしまい、同じように退屈が訪れる。そして「行為」の意味を問うのだ。

I’ll keep digging ‘till
I feel something.
おれが何かを感じられるまで
おれは掘りつづける

Elbow deep inside the borderline.
Show me that you love me and that we belong together.
Shoulder deep within the borderline.
Relax. Turn around and take my hand.
肘が境界の奥深くまではいる
おまえの愛をみせてくれ、おれたちは同じ穴の狢
肩が境界の奥深くまではいる
リラックスしろよ。反対向きになって俺の手を握れ。

彼は決意する。再び感動を取り戻すまで、掘り続けると。(ちなみにdigには山ほど意味があるので、好きな訳を当てはめてください)そして、指の付根まで侵入していた状態が、肘、そしてついに肩に至る。

ここまで読んで、何を歌っているか分かったあなたは耳年増です。そして、実際に体験したことのあるあなたは破天荒です。なんのことだかさっぱり分からないあなたは真面目です。これ以上読み進めることを勧めない対象は未成年です。

これはフィストファックの歌なんです。(フィストファックが分からない人はxvideosへ行こう)曲のタイトルも「臭い拳」だしね。それにしても見事としか言いようのない表現力。初めて聴いたときは感動したね。ここまで感動的に歌い上げられると、アブノーマルな性行為が神秘的にすら思えてくる。はじめは指で、それが根元まで入って、肘、肩と。肩なんて入るのかよ?
Tool (1990- )
ツールは音楽性も含めてオルタナの変態バンドとして名高いですが、特に話題になるのはそのPV。ギタリストのアダムが制作するPVのためのサントラといわれるくらい、独特で奇妙な映像世界を展開しています。好きか嫌いかで言ったら、好きではないんだけど、はまる人ははまる気がする。




1999年版
2003年版


ライブと上記のPV収録のDVD