2012年7月21日土曜日

[歌詞] Some Girls Are Bigger than Others (The Smiths)




From the ice-age to the dole-age 
There is but one concern 
I have just discovered :

氷河期から「失業手当」時代にいたるまで
少なくともひとつの関心事があることに
ぼくは気づいてしまった

Some girls are bigger than others 
Some girls are bigger than others 
Some girls' mothers are bigger than other girls' mothers

ある女の子たちは他の女の子よりも大きい
ある女の子たちは他の女の子よりも大きい
ある女の子たちの母親たちは他の女の子の母親たちよりも大きい

As Anthony said to Cleopatra 
As he opened a crate of ale : 

アントニオがエールの木箱を開けながら
クレオパトラに語ったように

Oh, I say : 
Some girls are bigger than others 
Some girls are bigger than others 
Some girls' mothers are bigger than other girls' mothers

ある女の子たちは他の女の子よりも大きい
ある女の子たちは他の女の子よりも大きい
ある女の子たちの母親たちは他の女の子の母親たちよりも大きい


Send me the pillow ... 
The one that you dream on ... 
Send me the pillow ... 
The one that you dream on ... 
And I'll send you mine

君が夢をみる枕を贈ってほしい
君が夢をみる枕を贈ってほしい
ぼくも君に枕を贈るから

The Smiths (1982-1987)
80年代に活躍したイギリスのバンド、ザ・スミス。オアシスのノエル・ギャラガー等その後のミュージシャンに多大な影響を与えたことでも有名です。そんな彼らが1986年発表に発表した3枚目のアルバム"The Queen is Dead"の最後を飾る曲がこの奇妙な"Some Girls are Bigger than Others"という曲です。

当時のイギリスはサッチャー政権下での急進的な経済改革により、300万人にも及ぶ大量の失業者が発生した時代だった。1986年はその頂点とも言える年であり、その時代背景が"the dole-age"「失業手当の時代」という言葉にあらわれています。

繰り返されるサビはきわめてシンプルでありながら、なにを言いたいのかわかりません。「ある女の子は他の女の子よりも大きい」。いったい何が?

英ウィキペディアによれば"As Anthony...ale."のくだりは、1964年公開のコメディ"Carry on Cleo"からの引用らしいのですが、映画をみてみてもそんな場面はありません。ザ・スミスのバイオグラフィー"Songs That Saved Your Life"に記載されているらしいのですが、どなたか読まれたら教えてください。


モリッシーは何に気づいたのでしょうか?それは過去から現在にいたるまで、「ある関心事」=「女の子の中には大きい子と小さい子がいる」という事実です。ここまで書くとニヤリとする人がいるかもしれません。男性が男性同士で女性の事を話題にするとき、たいしたボキャブラリーは使われません。

4コマ目:
「男性は必ず見つめるものよ…
大きくても小さくても」
「顔」「胸」「尻」この3つが男性が女性を話題にするときに、あるいは異性として意識するときに注視する箇所です。女性ならばさしずめ「顔」「金」「性格」でしょうか。基本的には男性はその幼少期から老年にいたるまで、興味の対象はほぼ変化しません。おそらく大きさうんぬんなら、まちがいなく「おっぱい」です。

人間は酔っぱらうとつい正直に、何のてらいもなく話してしまいがちです。ロミオとジュリエットと並ぶ名カップルである、アントニオとクレオパトラでさえ、エール(ビールの一種)で酔っぱらうと、いくらロマンチストを気取ろうと、正直な言葉が出てしまうということでしょう。

女性をきわめて即物的に、おっぱいの大小だけでとらえる。その醒めた視線と、「アントニオとクレオパトラ」というロマンスの象徴の対比がこの曲を非常に印象深いものにしてくれます。

もっとも、女性のリスナーやロマンチストはこの解釈に反対するかもしれません。事実、Songmeaningsでは「なに」が大きいのかについて喧々囂々の論争となっています。しかし、「体型」や「情熱」「社会的地位」などでは、まったくユーモアが足りません。

実はライブでは、さらに歌詞が足されています。

On the shopfloor
There's a calendar
As obvious as snow...
As if we didn't know
作業場にかけてあるカレンダー
雪のように明らかで
まるでぼくらが気づいていないかのように

大小
男たちが働く作業場には、たいていビキニのおねーちゃんのカレンダーがかけてあるものです。カレンダーの写真はきわめて即物的に女性を写し取ります。カレンダーをみれば一目瞭然なわけです。ロマンティックなヴァースに対する「女はおっぱい」と言う身も蓋もないサビこそが、この曲の醍醐味なのです。余談ですが、スペイン語のmamáは乳房を意味します。

そしてこの曲は、突然過度にロマンティックな歌詞で終わりを迎えます。実はこの部分は60年代に活躍したアメリカの歌手"Johnny Tillotson"の"Send Me the Pillow You Dream on"の引用です。あれだけ醒めたサビを繰り返しながら、最後には甘ったるく曲をしめるモリッシー。一筋縄ではいかないところが魅力です。





5 件のコメント:

  1. いつの時代(大変な人もいるのに)にも何故か肥えた女がいる、と勝手に解釈しています。

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  2. おっぱいだとすると母親に言及するのが不自然な気がするんですよね

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  3. the smiths の曲で一番好きな曲です。日本盤限定CD「stop me」に入っているLiveバージョンの方が好きです。氷河期というのを就職氷河期みたいなニュアンスで使い始めたのも英国病と呼ばれた当時のイギリスからだったと思います。
    「大きい」というのはやはり第二次性徴的なことともとれるし、年頃になると太っている痩せているというのは男女共に気にしますよね。そういうのにみんな関心があるんだってようやく気づいたんだ、全然知らなかったけど、というのが、思春期の男の子みたいな視線とも重なったりして・・。なんかすっとぼけた感じもするし、それがマーの見事なギターと好対照で何とも言えないSmithならではの雰囲気の曲です。
    ゲイでワーキングクラスで元ニートだったモリッシーみたいな人だからこそこういう歌詞が書けたのだし、当時の時代背景下でこういう歌詞に説得力があったのでしょう。

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  4. ↑上で書いた者ですが・・ニートというか失業者って言った方がいいでしょうかね?・・。あと「氷河期から失業手当の時代」って・・・1992年に「就職氷河期」という言い方がリクルート社の就職雑誌で初めて使われたというようなことがよく言われますが・・どうもイギリスのこういう言葉を知ってたのではないかと私などは思ってしまうのですが(因みに私92年大学卒です)・・。

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  5. 周りを差し置いて肥え太った男性もまたいつの時代にも存在していますよね。(北の将軍様など)“some boys”ではなく“some girls” である必要があったのはやはり女性の胸についての歌詞だからなのでは。また「大きさ」は親子で遺伝する傾向にあるので、母親の話が出てくるのも個人的にはそれほど不自然には感じませんでした。人格は全く無視されたまま自分の「身体のパーツの大きさ」について外野からあれこれと品評される場面は女性なら覚えがあると思いますが、そのような「品評会」を皮肉ったこの歌詞に対して、不快よりも爽快に感じる女性リスナーはいるでしょう。(胸についての歌詞と解釈した場合の話ですが)

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