2010年2月21日日曜日

[歌詞] The Biggest Lie (Elliott Smith)


I'm waiting for the train
Subway that only goes one way
The stupid thing that'll come to pull us apart
And make everybody late

ぼくは列車を待っている
片道の地下鉄
ぼくらを別れさせる
みんなを遅刻させるくだらないもの

第一ヴァースは静かな、そして短いイントロの後につぶやくようなエリオットの歌声ではじまる。まず描き出されるのは地下鉄を待つ主人公と、別離、そして地下鉄への呪詛である。「片道の地下鉄」が暗示するのはもはや戻ることのない二人の関係である。


You spent everything you had
Wanted everything to stop that bad
Now I'm a crashed credit card registered to Smith
Not the name that you called me with

きみは持っていたものすべてを使い果たしてしまった
悪いことを止めようとして
今じゃぼくはスミス名義のくだけたクレジットカード
きみはその名前で僕を呼ばなかったけれど

第二ヴァースではさらに二人の壊れた関係が暗示される。"spent everything" "a crashed credit card"からは現実的にも象徴的にも「浪費しつくされた」二人の姿が浮かんでくる。第一ヴァースでは全く無視された韻が、"had"と"bad"、"Smith"と"with"と綺麗に踏まれている。


You turned white like a saint
I'm tired of dancing on a pot of gold-flaked paint
Oh we're so very precious, you and I
And everything that you do makes me want to die
Oh I just told the biggest lie
I just told the biggest lie
The biggest lie

君は死人みたいに青ざめる
僕は金箔をちりばめた壷の上で踊るにはうんざりしている
ああ、ぼくらはたいしたものさ
そしてきみのすることすべてがぼくを死にたくさせる
ああ、ぼくはいまひどい嘘をついた
ひどい嘘をついただけ
ひどい嘘を

Elliott Smith (1969-2003)
この第三ヴァースのはじめの二行はさらに抽象的な表現になって、正直なにを言いたいのかがわかりにくいところだ。"saint"には「聖者」といういみもあるが、「死者」という意味もある。その後につづく"turned white"から察するに、ここでは「死者」のほうがいいだろう。次の行では"a pot of gold-flaked paint"の"gold"と"flaked"が少し間を空けて歌われている点に注目して欲しい。"a pot of gold"は慣用句であり、虹のふもとには金の壷があるとの古い迷信に由来して、「決して得られることのない報い」「思いがけない大金」を意味している。つまりこの行は"I'm tired of dancing on a pot of gold"「手に入らない希望に踊らされるのにうんざりした」が原義であり、その希望さえもが結局たいしたことがないことを表すため、自嘲気味に"-flaked paint"とつぶやかれるのだ(もちろん韻を踏むためでもある)。自嘲的なコメントは次の行「ぼくらはたいしたものさ」に連続している。
さて問題はこの歌の題名になっている"the biggest lie"が何なのかということだ。第一、第二ヴァースを通じて主人公の感情が表れているのは、第一ヴァースの"stupid"という単語のみである。ここからは恋人に対する未練が読み取れるのだが、第三ヴァースでは一転してうんざりした気分や、皮肉な調子、そして直前の「死にたくなる」という歌詞で感情が次第に高ぶっていく様子がうかがえる。そして彼は気づく。自分が言い過ぎたことに。



1 件のコメント:

  1. ルーリードの詞でこのサイトにたどり着いて
    エリオットスミスの好きな曲がちょうどあったので
    つい見させてもらいました。
    ありがとうございます

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