I can't hold down the urgency
You've got to make your descent slowly
And oil up those sticky keys
君にまだ力が残っているなら、僕を引っ張ってくれ
切迫した気持ちを押さえられないんだ
君は降りていかなければ行けない……ゆっくりと
そして回らない鍵に油をさすんだ
Arctic Monkeysの3rdアルバム"Humbug"からのイントロナンバーの曲です。解説を始める前にまず理解してほしいことは、この曲で歌われているのは「人」ではなく「飛行機」だということです。いや、もちろん比喩表現としてですが、そう仮定すれば曲全体に貫かれている表現がずっと理解しやすくなります。
主人公≠人間 |
Coax me out my low
And have a spin of my propeller
僕の低気圧をとりあげて
僕のプロペラをまわしてくれ
コーラスになると第一ヴァースでの仮定が生きてきます。"my low"は最低(値)とか、安値とか、低地、低温などの意味がありますが、ここはそのものずばり低気圧でしょう。主人公は低気圧のため飛び立つことができません。そして"a spin"つまり「一回転」でもいいからプロペラを回して欲しいと願っています。
It's a necessary evil
No cause for emergency
Borrowed the beak of a bald eagle
Oh, momentary synergy
しかたないけど受け入れなければいけない
急がなければいけないわけじゃないけど
ハクトウワシのくちばしを借りて
一瞬の相乗作用
第二ヴァースからは懇願ではなく、釈明というか言い訳がはじまります。「(プロペラが回らず飛び立てないことを)しかたないけど受け入れなければいけない」とはじまり「(君の助けが僕が焦っているからと云って)急がなければいけない理由は無いけど」と続きます。そしてこの曲最大の難所が……
ハクトウワシ |
まずハクトウワシから説明しますね。ハクトウワシというのは北米の沿岸部に生息する大型の鷲です。アメリカ合衆国の国鳥になっていて、紙幣等に使われているので目にしたこともあるはず。しかしハクトウワシのくちばしについて検索してみても手がかりにつながる有益な情報は得られず……
SongMeaningsをみてみると、ドラッグをスニッフィングするメタファーだとか、硬くなった男性器だとか、あまり役に立たない情報しかありません……もちろん、曲全体を性的なメタファーだと理解することは可能ですし、以前にも指摘しましたが、ロックにおける詩の大半はドラッグとセックスのメタファーです。作者は否定しているようですが、性的メタファー派は「君は降りていかなければ行けない……ゆっくりと、そして回らない鍵に油をさすんだ」
や「プロペラをまわして欲しい」、「しかたないけど受け入れなければならない(必要悪なんだ)」といった表現にその根拠を見いだすようですが、鍵は複数形ですよ?メロディに合わせたといってしまえばそれまでですが、オイルアップの必要な男性の鍵は一つしかありませんし、その場合なら"those keys"ではなく"my key"となるはず。そして射精のメタファーとして「プロペラをまわす」はどう考えても馬鹿げています。そのため今回は性的メタファーでないと断定します。そもそもセックスなら一人でもできるしね。SMにはハクトウワシはアメリカにいる彼女の事をさしているのではないか、といった意見もあり、そうするとこの箇所だけは性的な意味合いなのかもとも思いましたが、それなら"the beak FOR a bald eagle"となるはず。いや、そこまで厳密ではないのかもしれないけれど。結局のところ不明。ハクトウワシの求愛行動はつがいがプロペラのように回転しながら落ちてくるとの情報もあるのでその連想か。「一瞬の相乗作用」も説明がつく!でもそうすると「くちばし」が意味不明に……グダグダ書いてきましたが納得のいく推論はできませんでした。好きに捉えて下さい。
Coax me out my low
Sink into tomorrow
Coax me out my low
And have a spin of my propeller
僕の低気圧を取り去って
明日に沈めてくれ
僕の低気圧を取り去って
プロペラをまわして欲しい
My propeller won't spin and I can't get it started on my own
When are you arriving?
My propeller won't spin and I can't get it started on my own
When are you arriving?
My propeller won't spin and I can't get it started on my own
When are you arriving?
My propeller
僕のプロペラは回りそうにないし、一人では回せない
いつ来てくれるんだい?
僕のプロペラは回りそうにないし、一人では回せない
いつ来てくれるんだい?
僕のプロペラは回りそうにないし、一人では回せない
いつ来てくれるんだい?
僕のプロペラは回りそうにないし、一人では回せない
いつ来てくれるんだい?
僕のプロペラ……
結局この曲が何をいわんとしているのか。ふふふ、それはですね、一言で云えば
「プロペラ=やる気スイッチ」
なんですよ。ここまで長々と書いてきましたが、それに尽きます。曲作りかレコーディングかわかりませんが、一人じゃやる気が出ないのではやく来てよ。そういう曲なんです。
このブログは半年、下手したら1年おきぐらいにしか更新されていません。それはいざ歌詞を訳してみたらたいした意味がなくて解説する箇所がなかったとか、1曲解説するのに3〜4時間かかるからとか、心を動かされる曲がなかなかないとか、映画はキャプチャを撮るのが大変だとか、いくらでも言い訳できますが、一番の理由はプロペラがなかなか回らないからです。だれか回してくれ!
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